次に具体的にインプラント治療について話していきたいと思います。
インプラント治療とは、歯がなくなってしまった(歯の根がなくなってしまった)場合、その歯の根の代わりとなる人工の根(材料は金属:チタン)を手術で骨の中に入れていくという治療法です。
骨の中に入れたインプラントは一定の治癒期間(数ヶ月)おくことで、骨とインプラントはくっついてしまうのです。
このことは、人体の組織に対して、異物を入れることにはなりますが、チタンは組織に対して異害性がなく、親和性があるため異物といて排除されることがありません。
また、骨折した場合を考えていただけるとわかりやすいと思うのですが、一定期間ギブスをして固定をしておくと骨と骨がひっついてしまうのと同じように、一定の治癒期間をおくとインプラントと骨がひっついてしまうのです。
インプラントが骨と固定されれば、そこからは一般の歯科治療と同じで、型をとって歯の形のものをつければ固定性の歯が完成できるのです。
もちろん自分の歯とまったく同じではないので、自分の歯がまた生えてくると思ってしまうと、現実には少し違うので、そこのところはよく理解したうえで受けてほしいと思います。

では、インプラントについての悪い話もよく耳にしますが、実際にどのくらいの確立で失敗するかというと、先にも述べたように成功率は一般的に95%から98%ぐらいであるといわれています。また、私たちの成功率も、おおよそこれと同じです。ということは2%から5%の失敗は起きているということです。これを例えば5%の失敗であったとした場合、20本のインプラントを手術で入れた場合、1本ぐらいは失敗する、ということです。
では、失敗とはどういうことかといいますと、骨とインプラントがつかなかったということです。骨折をして、ギブスをしたものの、それをはずしたら骨とついていなかったということと同じです。決して、ひどく痛んだり大きく腫れて、膿んで、いろんなところにそれが及んでしまってひどい状態になってしまった、ということではないのです。そのように書いてあるものもありますが、それは、今のインプラント治療ではほとんど起こらないものです。
しかし、手術を伴うことには間違いはない、よって何らかの原因で膿んだり、腫れてしまうことはもちろんあります。それは、歯を抜いたりするインプラント以外でも同じですが、治療をする際にはどんな場合にもまったく起こる可能性がないということはないのです。しかも、痛みや腫れ、出血ということは、生態の刺激に対する正常な反応であり、その組織の変化があって組織は回復をしていくのです。
ですから、インプラント治療に関するすべてを知っていただき、理解して手術を受けていただければ、何も心配することはありません。さらには、高血圧症や心臓病など全身的な疾患のある方は麻酔科医に立ち会ってもらい全身管理をおこなってもらいながら手術をしていくことになるので安心して受けていただけます。
まずはインプラント治療に関してよく理解していただいた上で治療を開始しましょう。
では、先に述べた失敗はではなぜ起きるのでしょうか?
これは主に細菌による感染であるといわれております。
もちろん手術のときに滅菌していない器具を使えば感染してしまう可能性はあります。また、手術後に縫い合わせた組織の間から隣の歯についていた細菌が入り込んで感染してしまうこともあります。さらには、歯を抜いたときに骨の中に感染源を残したままになっていて、インプラントを入れたことで感染してしまったなどということもよくあります。
しかし、いつ感染しただとか、誰の責任だとか、どのようにしていればよかったのだとかということは調べようにも調べられないのです。手術のときに感染したのかもしれない、と疑うことはできたとしても、それを断定することはできないのです。
ですから、疑われる失敗の原因となるものは手術前にすべてなくしてしまうということは当然のことなのです。
そのことから、歯を抜くという治療よりも、インプラント治療は大げさであり、料金や、手間がかかることもあります。また、手術前には、残っているほかの歯に、むし歯や、歯周病があってはいけませんし、ハブラシができないようでは手術を受けていただくわけにはいきません。
私たちも患者さんも、お互いが目標に向かって、最善の努力が必要となってくるのです。それによって、2から5%の失敗率が、1から2%へと減少していくのです。もちろんインプラントが正しく装着されてからもそうです。
むし歯や歯周病が細菌による感染が原因であるのと同じようにインプラントも、メインテナンスを受け定期的なクリーニングを受けることで長く維持することができるのです。
しかし、ここで一番重要なことをお話します。
私たちの歯科医院の目標である「永遠の笑顔を求めて・・・治療中心から予防中心へ」のなかでも、なぜ今現在インプラントが必要なのか?どうして歯を失ったのか?その理由は何であり、その原因は改善したのか?このことのほうが重要であると思います。
というのは、私たちの目的は、
「患者さんの真の利益のため、人々が生涯にわたって口腔の健康を維持し、
健康な機能を全うすることにより最高の
笑顔を作れること。」
「80歳代に達した人たちにも、子供の場合と同様に生まれたときからの正常な歯を持てるように
してあげることができ、自分の歯で食事ができ笑っていられるようにサポートし続けたい。」
ということです。
歯がなくなったところに一時の満足のため代わりとなるインプラントを入れてそれでおしまいではないのです。
へんな言い方かもしれませんが、時間とお金をかけていただければ、インプラントはできます。
しかし、それでは真の利益は得られないと思っております。まずはどうして歯を失ったのかを考え、その原因を改善します。
それをしない限り、ほかの残っているご自分の歯も次から次へと無くなっていってしまいます。同じ一人の口の中の環境です。たまたまの条件で、少し先に歯を失った部位が存在するだけなのです。
インプラントを入れることに集中しすぎず、本来の真の目的である。健康を維持する、他の残っている歯をこれ以上失わないための努力のほうが極めて難しくなってくるのです。
このことは、私の所属していた研究室の先輩が約20年前に日本にインプラントを持ち込んできたということもあり、私は運よくその20数年前よりインプラント治療を受けてこられた方を数多く見させていただきました。
もちろん私の臨床経験は約10年その中でインプラントの執刀医としての経験はまだそれほどでもなくそんなに多くのことは語れる立場ではないのです。
しかし、そのときに見させていただいた経験では、インプラント治療をされた方はほとんどインプラントは10年以上20年良好に経過しているのです。残っている自分の歯が次から次へと無くなって、あげくの果てには、取り外しの入れ歯を入れるようになってしまうという、本末転倒なことになってしまっているのです。
このことは、さらに歯が無くなれば追加でインプラントを入れるという方もいれば、体力的に手術に耐えれず断念する方もいます。さらには金銭的に追加ができずに歯がないまま生活している方もいます。
そこで、今の現状を考えて見ましょう。
もし、今現在数本しか歯を失っておらず、インプラント治療をどうしよう、歯科医院選びはどのように決めたらいいのか、値段はどこが適切かと悩んでいらっしゃる方、そこにあまり悩み過ぎないようにしてください。
本当に悩んでほしいのは、これ以上歯を失わないためにはどうしたらいいんだろうということです。
日本人の平均の寿命を考えていただき、また、8020という言葉も参考にしていただければと思いますが、80歳で20本の自分の歯が残っているようにしようという運動であり、今現在それを達成している人はほとんどいないのです。
平均で言いますと、全部では歯28本あるのですが、70歳で15本歯を失っています。80歳でいうと20本歯を失っています。75歳以上の60%が総入れ歯(1本も自分の歯がない)になっているのです。
平均でこのようになるのが日本人であると考えると、まだ数本しか歯を失っていないのであれば、その状態であまり生活には困っていないと思います。その状態より悪くなると食事や発音で困ってしまうと思います。
しかし、それ以上歯を失わず、70歳80歳と生活できれば、それはとても優秀なことになるのです。
もちろん歯のないところには、代わりの何かを入れたほうがいいです。 でも、本来の目的をしっかり考え直していただき、インプラント治療を受けていただければと思っております。 |